2024年は辰年ですね。
「辰」とは龍のことを指す言葉です。
しかし、名前に「タツ」がつくとして「タツノオトシゴ」も辰年の年賀状のモチーフとして高い人気があります。
タツノオトシゴと一口に言っても色々な種類が存在し、見た目や生態も様々です。
本記事では辰年にちなんで、タツノオトシゴの種類を紹介します!
タツノオトシゴは変わった見た目をしているので何の仲間なのか分かりにくいですが、意外にも魚類(硬骨魚類)に分類されています。
▲メニーリングドパイプフィッシュ
タツノオトシゴは細くて長い魚の「ヨウジウオ」(英名:パイプフィッシュ)から分岐した生物と考えられており、ヨウジウオの口元はタツノオトシゴによく似ています。
▲ヨウジウオの口元
ヨウジウオが泳ぐのが得意であるのに対し、タツノオトシゴは泳ぐことを苦手とします。 その代わりに尾を発達させ、珊瑚などに掴まることを得意としています。
■尾を巻きつかせるタツノオトシゴの年賀状テンプレート
▲育児嚢に産卵されたタツノオトシゴのオス
また、ヨウジウオは雌が雄の育児嚢に産卵して雄が育児をし、その後出産するという繁殖形態ですが、タツノオトシゴもこれと全く同じやり方で繁殖をします。 変わった見た目から江戸時代には虫として扱われていましたが、生物分類学上はれっきとした魚です。
日本では架空の生き物である「竜」の子供の様に見えることから「竜の落とし子」と呼ばれています。 英語圏では、なんとなく顔つきが馬に似ていることから「sea horse(シーホース)」と呼ばれています。 「sea horse」は直訳すると「海馬」となります。
人間の脳にも「海馬」(かいば)という部分がありますが、これはタツノオトシゴに似ていることからそのような名前になりました。中国語でタツノオトシゴはそのまま「海馬」です。
タツノオトシゴは、竜と同じく「魔よけの力」を持っていると信じられ、縁起が良い生き物として扱われてきました。 雄が育児嚢で育児を行うことから、「夫婦円満」の象徴としても好んで利用されてきました。
■夫婦円満のシンボルとしてのタツノオトシゴの年賀状テンプレート
■夫婦円満のシンボルとしてのタツノオトシゴのイラスト
また、タツノオトシゴは頭を上にして泳ぐという習性があり、水面へ向かって泳いでいく姿が昇り龍に似ていることから「運気上昇」のシンボルとしても人気があります。 現代でも、タツノオトシゴをモチーフとしたマスコットやキーホルダー等は縁起物として高い人気を得ています。
このように色々な伝承があるタツノオトシゴですが、どれも縁起が良く年賀状とも非常に親和性が高いモチーフだと言えます。
タツノオトシゴには、たくさんの仲間がいます。
学名:Phycodurus eques
生息地:オーストラリア
褐藻類に擬態しているタツノオトシゴの仲間です。 成長するとおよそ30cmにもなる大型種です。 シードラゴンはシーホース(タツノオトシゴ)と同じトゲウオ目ヨウジウオ科に属しますが、タツノオトシゴと違いシードラゴンは「尾を物に巻き付けない」という特徴があります。
特徴的な見た目から原産地のオーストラリアでは切手になるほど人気がありますが、それゆえに採集されすぎて数が減ってしまったため、現在では準絶滅危惧種(NT)に指定され保護対象となっています(※2023年12月現在)。
現地に行って本種を捕獲し、日本へ持ち帰ることは違法です。 しかし、現在日本にいる個体を繁殖させて販売することは合法であるため、市場に繁殖個体が出回ることがごくごく稀にあるようです。 ただし、繁殖方法は確立されておらず繁殖の難易度がかなり高い為、販売価格は1匹数百万円程度と言われています。
リーフィーシードラゴンはまさに「ドラゴン」の名を冠していることから、辰年の年賀状にピッタリです。 年賀状に本種のイラストを添えると、非常に華やかで映えそうですね。
■リーフィーシードラゴンの年賀状テンプレート
■リーフィーシードラゴンのイラスト
学名:Phyllopteryx taeniolatus
生息地:オーストラリア南部、タスマニア島沿岸
リーフィーシードラゴンに似ていますが、属が異なります(リーフィーシードラゴンはPhycodurus属)。 リーフィーシードラゴンよりも皮弁の数が少なく、体が10cm程度大きいのが特徴です。 こちらも華やかな見た目で、年賀状のデザインとしてもとても映えそうです。
褐藻類に擬態しているため自ら動くことは少なく、波に揺られています。 褐藻類の擬態に特化した体のつくりをしているため、タツノオトシゴと違って尾で何かに掴まることはできません。 しかし、この擬態は天敵の捕食から逃れるだけでなく、獲物に気付かれずに捕食を行うことにもとても役立っています。
ウィーディーシードラゴンは日本では葛西臨海水族園で飼育されており、公式のX(旧:Twitter)から動画を観ることができます。
臨時休園中も、 #おうちでかさりん を楽しんでください!
— 葛西臨海水族園[公式] (@KasaiSuizokuen) March 25, 2021
今日は「オーストラリア西部」水槽のウィーディシードラゴンをお届けします。
漂う海藻に擬態することで、敵だけでなくエサとなる小さな生き物にも気づかれにくいウィーディシードラゴン。
その泳ぎをご覧ください。#休園中の動物園水族館 pic.twitter.com/MD7HjplzNu
また、葛西臨海水族園は2019年7月に、国内で初めてウィーディーシードラゴンの繁殖を成功させています。
ウィーディーシードラゴンも、リーフィーシードラゴンと同様に時々市場に出回ることがあります。欲しい方はアクアリウムショップの入荷情報に目を光らせましょう。
■ウィーディーシードラゴンの年賀状テンプレート
学名:Hippocampus japapigu
生息地:八丈島、沖縄、四国、伊豆諸島など
日本で発見された、ピグミーシーホースの仲間です。 ピグミーシーホースとは、成体でも1〜2cm程度にしか成長しない非常に小型のタツノオトシゴの総称です。 ピグミーシーホースの仲間は世界に9種存在します。
種小名(学名の2語目)がjapapigu(ジャパピグ)ですが、これは日本で発見されたピグミーシ―ホースであることにちなんでいます。 和名の「ハチジョウタツ」の「ハチジョウ」は、八丈島(はちじょうじま)から来ています。 体に白い網目状の模様があることが特徴です。
ピグミーシーホースの仲間であることから本種もまた成体になっても2cm程度にしかならないことから非常に可愛らしく、タツノオトシゴの中でも高い人気を得ています。
比較的浅いところに生息しているため、現地のダイビングで見つけることも可能です。 ただし、体長が2cm前後と小さい上に珊瑚に上手く擬態しているため、見落とさないように注意を払う必要があります。 しかし小さな体が可愛らしいため高い人気があり、ダイビング時に本種を好んで探す人も多いようです。
可愛らしいですが、体が小さく水質や水温の変化に敏感なため、個人での飼育は困難な種です。
学名:Hippocampus kuda
生息地:太平洋・インド洋など
漢字表記は「黒海馬」です。 「黒」という名の通り黒色をしている個体が多いですが、黄色やクリーム色の個体も存在しており、体色の個体差が大きい品種です。 世界のいろいろな所に生息しており、日本でも見かける種です。 タツノオトシゴの中では比較的流通量が多く、色々なショップで(飼育・鑑賞目的で)度々販売されています(※ワシントン条約(CITES)で本種の国際取引は規制されているため、流通しているのは国内で繁殖した個体です)。
本種は飼育・鑑賞用のみならず滋養強壮のための漢方としても用いられ、生きた状態のみならず、乾燥させた状態でも数多くの個体が流通しています。 2020年に静岡商工会議所傘下の「新産業開発振興機構」と「東海大学海洋学部」と「ショアアース」の3者が手を組み、本種の養殖産業を開始しました。 香川県に養殖プラントを建設し、東海大学海洋学部から提供されるクロウミウマを養殖し、乾燥させて出荷を行っています。 漢方の原料になるという理由から本種の乱獲が問題視されていたこともあり、本種の繁殖を事業化することは海洋資源の保護にも繋がると見られています。 本事業は地方の雇用創出にも繋がっており、本種は何かと日本経済の役に立っています。
学名:Hippocampus abdominalis
生息地:オーストラリア
本種は「ポットベリーシーホース」という名前で呼ばれることが多いですが、「ビッグベリーシーホース」と呼ばれることもあります。 「ポットベリー」(potbelly)は「腹太鼓」を意味する英単語で、丸みを帯びた腹部が特徴的な種です。 その名の通り最も大きい種類のタツノオトシゴで、大きい個体では35cmにもなります。 先程紹介したハチジョウタツは約2cmであることから、両者ともHippocampus属でありながらその差はなんと33cmにもなります。
食用に利用されることはほとんどありませんが、大きくて見応えがあるため、観賞用として人気が高いです。 色は水深や住んでいる環境によって変化し、白や灰色、黄色、茶色、オレンジ、またはこれらが混ざり合った色など、非常にバリエーションに富んでいます。
日本には生息していないタツノオトシゴですが、日本国内の多くの水族館で飼育されています。 比較的繁殖が容易な種で日本各地の水族館で繁殖が行われているため、タイミングが良ければ幼体を見ることが可能です。 タツノオトシゴは成体と同じ体で生まれてくるため、生まれてすぐに尾で珊瑚や海藻につかまることができます。
■ポットベリーシーホースの年賀状テンプレート
日本で最もタツノオトシゴが多く展示されている水族館は「伊勢シーパラダイス」です(2023年12月現在)。 元々企画展でタツノオトシゴ特集を行ったところ好評を博し、2020年7月に「タツノオトシゴのくに」をオープンして常設展示となりました。 上記で紹介しているクロウミウマ、ポットベリーシーホースに加え、サンゴタツ、ヒメタツ、ハナタツなど合計10種類のタツノオトシゴを常時展示しています。
伊勢シーパラダイスでは、日本で初めて水槽に手を入れてタツノオトシゴの尾を自分の指に巻き付けに来てくれるという「巻き付きふれあい体験」も行っています。
有料イベント(300円)ですが、ふれあい終了後に限定缶バッジを貰うことができます。
(※情報は2023年12月現在のものです。該当イベントは今後中止になる可能性もありますので、必ず公式ホームページをご確認ください)
詳細:タツノオトシゴ巻き付きふれあい体験|伊勢シーパラダイス
・日経新聞「タツノオトシゴ養殖を事業化へ 静岡商議所や東海大」
・東京ズーネット「ウィーディシードラゴンの繁殖に成功しました!」
・伊勢志摩経済新聞「伊勢シーパラダイス、タツノオトシゴの飼育種日本一に 日本初のふれあい体験も」
・魚図鑑 クロウミウマ
・魚類図鑑 ポットベリーシーホース
・生物図鑑 ハチジョウタツ
・動物大図鑑 リーフィーシードラゴンとウィーディーシードラゴン
・タツノオトシゴハウス
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